大阪朝鮮高-光泉の笛を吹いた川原佑レフェリー
全国高校ラグビーは東福岡の5度目の優勝で幕を閉じた。若人たちが力いっぱいのプレーで楽しませてくれたが、もう1人、筆者が注目していた22歳の若者がいる。
川原佑(かわはら・たすく)レフェリー。12月30日の2回戦、大阪朝鮮高-光泉の笛を吹いた。これは画期的なことだった。川原レフェリーは現役の明大4年生。94度の長い歴史を持つ花園の全国大会で、大学生が初めてレフェリーを務めたのだ。寒風の中でも流れる汗をふきながら、「今できることは100%やったつもり。楽しかったです」とさわやかに語ってくれた。主審はこの1試合、他に2試合でアシスタントレフェリー(タッチジャッジ)を務めた。
4歳からラグビーを始め、長崎南山高ではSOやFBでプレー。2年生で全国選抜大会にも出場した。しかし、その年の5月に右膝半月板や靱帯(じんたい)などを痛める重傷で3度の手術。プレーはままならず、指定校推薦で明大への入学が決まると「何かチームに貢献できることは」と考え、ラグビー部でレフェリーを志したという。
日本のレフェリーは、都道府県協会が公認するC級、3地域(関東、関西、九州)協会公認のB級、日本協会が公認して国内チーム同士の試合が吹けるA1級と、国際試合が吹けるA級の順で格が上がる。B級の中でもトップリーグのアシスタントレフェリーや高校の全国大会を吹くことができる資格がA2級として区別されている。川原レフェリーは学生ただ1人のA2級でもある。
「W杯を20代のレフェリーが吹く時代。日本もその流れに遅れないようにしないといけない」と話すのは、日本協会・岸川剛之審判委員長。日本協会では10年ほど前に若手レフェリー育成のため「レフリーアカデミー」を発足。27人いるA、A1級で、20代後半から30代の11人がアカデミー出身だ。4月にはNTTコムの社員となる川原レフェリーも今年度のアカデミー生に入る予定で、毎月1度、語学力やメンタルトレーニング、ランニング技術などを学ぶことになるという。「上がある限りは目指したい」と本人も、パネルレフェリー(ワールドラグビー公認の世界最上級)を目標に意欲を見せてい
「レフェリングの向上なくては、日本ラグビーの向上もありえない」と岸川委員長。花園に出場するような高校には1~2人、必ずレフェリー志望者がいるといい、高校生世代全体でも将来、大観衆の前で笛を吹きたいと希望する者が増えてきているそうだ。川原レフェリーの“快挙”は、次世代への希望ともなる。